瀬戸内海に浮かぶ大久野島。そこは1000羽を超える可愛らしいうさぎが生息する「うさぎの島」として、近年注目を集めています。そして、この島にはもう一つの顔があります。かつては日本軍の毒ガス製造拠点として、地図からその存在を消されていたという過去を持つ島です。
毒ガスの島、そしてうさぎの楽園へ
第二次世界大戦中、大久野島は軍事機密保持のため、地図から抹消されていました。島内には毒ガス工場が建設され、終戦まで秘密裏に毒ガス製造が行われていました。戦後、遺棄された毒ガスや化学兵器の処理は困難を極め、現在もなお、島内には毒ガス貯蔵庫や砲台跡などの戦争遺跡が残されています。
そんな暗い過去を持つ島に、なんでうさぎ…!?
毒ガス工場の実験動物として飼育されていたうさぎが終戦後に島に放されたことが始まった、という正解らしき説があったのですが、2023年に真実が発覚。1970年の末に国民休暇村という島唯一の宿泊施設が8ペアを放したとか。うさぎの繫殖力は強く、1年半で200匹に増えてしまったようです。
天敵のいない島で、うさぎたちはのびのびと暮らし、その数は急速に増加。コロナで観光客が減った影響で減って、また戻って増えて…いずれにしても、島の風景に欠かせない存在となっています。「うさぎの島」なんて、他で聞いたことがありません。この高い繁殖力を持つ特徴が子沢山に恵まれる動物として有名であり、安産や子宝成就、子孫繁栄の象徴として世界中で親しまれているとか。可愛いだけじゃないうさぎに、納得です。
大久野島で体験できること
大久野島は、過去の負の遺産と現在の平和なうさぎの楽園という、対照的な側面を持つ島です。なんだか面白い組み合わせですよね。島の中では広大な自然を全身で感じることができます。歩いていると突然たくさんのうさぎが現れるという非日常的な体験ができて、癒しを与えてくれます。
そしてその自然の中に、当時の遺構が説明書き付きで残っています。
毒ガス貯蔵庫跡、砲台跡、発電場跡…当時のままの姿が鮮明に残っているので、インパクトがあります。
毒ガス資料館では、島の歴史と毒ガス製造の事実が展示されているので、歴史好きでしっかり知りたいという方にもお勧めです。
相反する2つの要素を持ち合わせている大久野島は、癒やしと歴史が共存する不思議な島。可愛らしいうさぎたちに癒されながら、戦争の記憶を忘れずに、平和の尊さを考えることができる、貴重な場所と言えるでしょう。
竹原市・アクセス方法
大久野島へは、忠海港(広島県竹原市)からフェリーで約15分。1日10便以上運行しているので、いつでも気軽に行くことができます。宿泊施設には温泉もついており、日帰りでも利用することができます。
また大久野島が位置する竹原市は、古くから瀬戸内の交通の要衝として栄えていたこともあり、重要伝統的建造物群に選定された町並み保存地区があります。大久野島へ訪れる際はこちらも一緒に訪れてみることがお勧めです。
市内には竹鶴酒蔵の「竹鶴」、藤井酒蔵の「龍勢」、中尾醸造の「幻(まぼろし)」の3つの酒蔵や、ジャムで有名なアヲハタジャムの本社があり工場見学や体験もできます。
広島は見どころ満載ですね。ぜひ新しい旅を楽しんでみてください!