今回は日本の伝統美と現代美術が融合した、立礼茶室「然美」を紹介させてください。
●立礼茶室「然美」とは
ニューヨークと京都を拠点としていた、デザイナーで現代美術家の髙橋大雅氏が、歴史ある祇園・花見小路に開いた立礼茶室「然美」。ここは老舗和菓子司の職人技が光る茶菓子と創作日本茶のペアリングを味わうことが出来る場所です。
大正時代の初期(1904年頃)に建てられた町家を築100年の町家を、古材を使用して総改築した建物。数寄屋造りという日本の美の真髄ともいえる建築様式が取り入れられています。
1階には髙橋大雅氏の彫刻作品や古美術などを展示するギャラリー、さらに「タイガ・タカハシ」ブランドのブティック、そして2階に立礼茶室「然美」があります。
2階に上がると、黒を基調とした茶室が。壁は唐紙工房「かみ添」の和紙に包まれ、椅子は20世紀を代表するデザイナーのひとりであるジョージ・ナカシマさんの家具を長年制作してきた「桜制作所」と共作とのこと。この空間に馴染みながらも独特な存在感を放っています。
●茶菓懐石
然美は13:00と16:00に一斉スタートする完全予約制。
席に着き、時間になると、スタッフの方の一礼から「茶菓懐石」と名付けられたコースがスタートします。お茶を淹れていく様子はパフォーマンスアートのようで、所作がとても美しく見惚れてしまいます。
コースは5品の茶菓子と5品の日本茶で構成され、果物や発酵バター、黒七味など多彩な食材を用いて創る、和と洋を融合させた独自のペアリング。毎月品書きが変わり、茶菓については一度出したものは2度と出さないというこだわりが。一品一品が、視覚、味覚、嗅覚を刺激する芸術作品のように感じます。
わたしは何度か訪れたことがあるのですが、一般的なカフェや喫茶店とは雰囲気が異なり、ここではこの空間を静かに楽しんでいる人が多いのが印象的です。
目で見て楽しみ、口に入れて目を瞑る。
一人一人が、この空間でしか味わうことのできない味覚やその時に感じる感情を噛み締めているようにも感じます。
●「然美」という名前の由来
「然美」という名前には、日本の美意識を象徴する「然(しかり)」と「美(うつくし)」の2つの意味が込められています。また公式サイトでは以下のような文章が。
時の移ろいとともに、
うつくしく変化すること。枯れて風情が出る、古びて趣が出る。
朽ちていく様子と、豊かで華麗な様子の
相反する要素が交わりながら内面の奥底にひそむ本質が
時間の経過とともに外へと滲み出る。日本美術の起源である「不完全の美、不均衡の美」
茶碗の名品や名茶室の柱などは、
微妙に仄かに歪んでおり、その膚はガラス板のように滑らかではなく
「さび」に覆われている。
私がこの文章を読んだのは、初めて然美に訪れた日の夜でした。
スッと胸に落ち、深く理解することができたことを今でも覚えています。
古びていても、そこに豊かさや美しさを感じることができる。普段の生活の中では目を向けることがない何かに気づくことができたり、日々の生活では生まれることのない感情が、ここに来ると生まれる。そんな体験をさせてくれる然美は、私にとって唯一無二な空間です。
気になってくださった方は、是非是非、訪れてみてください。
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