千葉県香取市佐原で開催される「佐原の大祭」は、300年以上の歴史を誇る関東三大山車祭りの一つ。毎年7月と10月に開催され、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。江戸情緒あふれる町並みを舞台に、豪華絢爛な山車が巡行する様は圧巻です。本日は、そんな「佐原の大祭」の表には出てこない、地元民ならではの視点から魅力をお届けしていきます。
佐原の大祭の始まりと歴史
佐原の大祭は、17世紀後半に始まったとされています。当時、佐原は利根川の水運を利用した商業の拠点として栄えていました。祭りは、商人の町として繁栄を祈願し、感謝の気持ちを表すために始まったと伝えられています。
この頃、江戸は江戸幕府のおひざ元、商業の町として世界でも有数の大都市として成長していった時期と言われています。蒸気機関車などの鉄道、陸運が発展しないこの頃の運送業のメインは「水運」であり、江戸の商業を支える入口(利根川河口)が、ここ佐原だったこともあり、商人の町として栄えていました。(天明の大飢饉と伊能忠敬の功績から佐原の「自治文化」を見ていくのも楽しいですよ♪)
参考： ちば観光ナビ「伊能忠敬の知られざる生涯 〜実は日本地図が作りたいわけではなかった!?」より
元禄16年（1703年）には、佐原で初めて山車が曳き回されたという記録が残っています。その後、文化・文政期（1804～1830年）には、山車の装飾がより豪華になり、現在のような人形山車の形が完成しました。
明治時代に入ると、祭りは一時衰退しますが、地元の人々の努力により復興。現在では、毎年多くの観光客が訪れる、佐原を代表する祭りとなっています。
佐原の大祭の見どころ
佐原の大祭の見どころは、なんといっても豪華絢爛な山車です。高さ約4メートル、重さ約4トンにもなる山車は、江戸・明治期の職人によって作られた精巧な彫刻や人形で装飾されています。
夏祭りは八坂神社の祇園祭で、本宿地区を10台の山車が巡行します。秋祭りは諏訪神社の祭礼で、新宿地区を14台の山車が巡行します。それぞれ異なる山車が登場するので、両方見比べてみるのもおすすめです。
山車の上では、佐原囃子と呼ばれる伝統的なお囃子が演奏されます。笛、太鼓、鉦の音が調和した佐原囃子は、日本三大囃子のひとつに数えられています。
祭りの期間中は、山車の曳き回しだけでなく、様々なイベントが開催されます。夜には、提灯でライトアップされた山車が幻想的な雰囲気を醸し出す「宵曳き」が行われます。また、山車が向きを変えたり、すれ違ったりする際に披露される「曲曳き」も見どころです。
このお祭に参加すると、その豪華爛漫さと山車の引手による緻密で繊細だけども息のぴったり合った動きに驚かれると思います。しかし、もっと驚くことがあります。それは、この佐原の大祭が「口伝文化」で継承されているということです。
口伝文化とは、一切のテキストや絵などで技術を教え、歴史を紡いでいくのではなく、人から人に口伝えで、ときにはその演技をもって伝えていくことを言います。現代人のわたしたちからすると「マニュアルを読ませてください。」と言いたくなりがちですが、そのマニュアルというものを一切残さない文化が『口伝文化』です。
そのため、佐原には「人と人の会話を大切にする。」「解りあえるまで話し合う。」という文化が根付いていると言います。口伝や話し合い、自治意識を文化として根付かせてきた佐原の町並みを練り歩く山車を追いかけながら、周りを見渡すと面白いことに気が付くかもしれません。
- 目の錯覚「遠近法」を利用して、家屋・土地を大きく見せる手法
- 小野川(佐原の町並みの中心を流れる川)に向かって、すべての道路が緩やかに斜めになっている
- 東北地方で見られる「縦向きの信号機」が、祭の山車が通る際に邪魔にならないように設置されている
- 多くの物件の外壁が「防火」のために二重構造になっていること
などなど…他にもたくさん隠れた見どころがありますので、「佐原町並み交流館」経由でツアーを申し込んでみてください！
皆様に「佐原の大祭」でお会いできることを楽しみにしてます⛩️
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Edit by 長嶺将也
