新潟県上越市、高田。ここは、江戸幕府の戦略的な意図によって生まれ、豪雪という厳しい自然と向き合いながら独自の文化を育んできた城下町です 。400年の時を超え、今もなお訪れる人々を魅了する高田の真髄は、その歴史を「体験」できることにあります。徳川の威信をかけた城、雪国の暮らしが生んだ雁木通り、そして夜空を彩る桜の饗宴。筆者が訪れたのは日本一周中の冬の時期でした。新潟県では行く当ても、約束もなく、ただ町を歩き、たたずみ日が暮れていった1日…そんな哀愁漂う1日にホッとする温かさとノスタルジックで、どこか優しく体温を上げてくれた場所「高田」の町をご紹介します。

徳川の戦略と民の力:高田城の物語を歩く
画像引用:たびよみより
高田の歴史は、慶長19年(1614年)、徳川家康の六男・松平忠輝によって高田城が築かれたことから始まります 。大坂の陣を目前に控え、豊臣恩顧の加賀藩を牽制し、北陸・越後支配を盤石にするという幕府の強い意志 。その戦略的要請のもと、わずか4ヶ月という驚異的な速さで築かれた城は、石垣を持たず、広大な水堀と土塁で守りを固めた、他に類を見ない「土の城」です 。 ”突貫工事”とも言われた築城は、わずか4か月で完成を迎え、徳川幕府の権威を示すためのデモンストレーションの意味合いもあったとされ、伊達政宗をはじめ、上杉景勝など13家もの有力大名が動員されたとか…。

高田城址公園を歩けば、その壮大なスケールを体感できます。高くそびえる土塁は、天下普請の息吹を今に伝え 、平成5年に再建された三重櫓 は、城のシンボルとして凛と佇みます。櫓の最上階から城下町を見渡せば、築城を急いだ当時の緊迫感や、この地を治めた歴代藩主たちの想いに、想像力が掻き立てられるでしょう。春には桜、夏には「東洋一」と称される蓮の花が堀を埋め尽くし 、訪れるたびに異なる表情を見せてくれます。ここは、歴史の重みと自然の美しさが融合する、特別な体験空間なのです。
日本一の回廊:雁木通りに息づく共助の心に触れる

画像引用:にいがた観光ナビより
高田の街を歩く上で、決して外せない体験が「雁木(がんぎ)通り」の散策です。家々の軒先を長く伸ばし、連なることで生まれる屋根付きの通路 。これは、世界有数の豪雪地帯で、冬でも人々が安心して往来できるようにと生み出された、雪国ならではの生活の知恵です 。
高田に現存する雁木の総延長は約16kmにも及び、日本一の長さを誇ります 。一歩足を踏み入れると、そこはまるで時が止まったかのような空間。一軒ごとに高さや造りが微妙に異なる雁木の下を歩けば、その土地が私有地でありながら、公共の通路として提供されてきた歴史に思いを馳せるでしょう 。これは、厳しい自然環境の中で、人々が互いに支え合い、道を譲り合ってきた「共助の精神」 の結晶なのです。雁木通りには、歴史ある町家を改装したカフェや商店も点在します 。温かい光が漏れる格子戸をくぐり、一杯のコーヒーを味わう。そんなひとときも、雁木が繋いできた人々の温もりを感じる、かけがえのない体験となるはずです。

画像引用:にいがた観光ナビより
ここ雁木通りの歴史をさらに感じたい方にお勧めなのが「町の家 MACHI’s HOUSE」という【家主滞在型民泊】です。家主家族が暮らす家の空き部屋に宿泊させていただくという、いわゆるホームステイスタイルの宿泊です。時間が合えば、高田の町の魅力やおススメのカフェ、歩き方などを優しく教えてくれます。知らない土地で、初めて会う人と温かく深い地域の会話をする。これが現代の旅の醍醐味のように筆者は考えています。
幻想の夜桜絵巻:日本三大夜桜の感動を全身で浴びる

画像引用:上越観光Naviより
春、高田は一年で最も華やかな季節を迎えます。高田城址公園で開催される「高田城址公園観桜会」は、日本三大夜桜の一つとして、全国から多くの人々を惹きつけます 。約4,000本の桜が咲き誇り 、公園全体を埋め尽くす様は圧巻の一言。
しかし、この観桜会の真骨頂は、日没後に訪れると言われています。約3,000個のぼんぼりが灯され、ライトアップされた三重櫓と桜並木がお堀の水面に映し出される光景は、まさに幻想的 。息をのむほどの美しさが、そこにあります。「さくらロード」と呼ばれる桜のトンネルを歩けば、光と花びらに包まれ、まるで夢の世界に迷い込んだかのよう 。この桜は、明治時代に駐屯していた兵士たちによって植えられたものが始まり(高田は帝国陸軍第13師団の誘致に成功し、「軍都」としての性格を強めた時期もありました!) 。歴史の記憶を受け継ぐ桜が、今、私たちの心を揺さぶる絶景を創り出しているのです。露店が立ち並び、賑わう人々の声が響く中で体験する夜桜は、忘れられない感動を与えてくれるでしょう 。
高田でしかできない体験を
高田城の歴史を肌で感じ、雁木通りに息づく人々の温もりに触れ、夜桜の幻想的な美しさに心を奪われる。高田には、ここでしか味わえない、深く心に残る「体験」が溢れています。訪れることは、この街が紡いできた歴史と文化、そして未来への活力を支えることに繋がります。これまでとは一味違った旅を体験したい、ノスタルジックで不思議な空間に没入したい、という方にぜひ訪れていただきたい時空を超える場所「高田」へ。
▶高田城 三重櫓
Web: https://www.city.joetsu.niigata.jp/site/museum/takada-castle.html
〒943-0835 新潟県上越市本城町6−1
▶町の家 MACHI’s HOUSE
Web: https://ganginoyado-machinoie.com/
住所: 〒943-0831 新潟県上越市仲町6−1−5
高田駅より徒歩7分
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Edit by 長嶺将也