じりじりと照りつける太陽、うだるような暑さが続く日本の夏。食欲も体力も奪われがちなこの季節を乗り切るために、古くから日本の食文化に根付いているのが「土用の丑の日のうなぎ」です。香ばしく焼き上げられた蒲焼の匂いは、夏の訪れを感じさせる風物詩ともいえるでしょう。
うなぎを取り巻く環境は年々厳しさを増していますが、今年は少し明るい兆しもあるようです。今年の夏は、日本の養鰻家たちが丹精込めて育てた、安全で美味しい「国産うなぎ」を味わう旅に出てみませんか?
なぜ夏の「土用の丑の日」にうなぎを食べるの?
夏の土用の丑の日にうなぎを食べる習慣は、今や国民的な行事となっていますが、その起源は江戸時代に遡ると言われています。
最も有名なのが、江戸時代の蘭学者・発明家である平賀源内が、夏場に客足が遠のいて困っていたうなぎ屋のために「本日、土用丑の日」という張り紙を出すことを提案したという説です。これが大当たりし、他のうなぎ屋も真似するようになって定着したとされています。
しかし、うなぎと夏の健康を結びつける考えはさらに古く、奈良時代に編纂された『万葉集』にも、大伴家持が吉田石麻呂に贈った歌に「石麻呂に吾れもの申す夏痩せに良しといふものぞ鰻(むなぎ)捕り喫(め)せ」とあり、古くから夏バテ防止にうなぎが食べられていたことがうかがえます。ちなみに『日本書紀』では、7世紀になんと皇室へ鰻が献上された記録があるとか。

栄養学的にも、うなぎにはビタミンA、B群、D、E、そしてDHAやEPAといった良質な脂質が豊富に含まれており、疲労回復や免疫力向上に効果的です。まさに、夏の暑さを乗り切るための先人の知恵と言えるでしょう。
資源減少の現実と、今年の明るい兆し
私たちが食べているニホンウナギは、2014年に絶滅危惧種に指定され、その資源量は依然として低い水準にあります。特に、養殖に不可欠な天然の稚魚「シラスウナギ」の漁獲量は年によって大きく変動し、食文化の未来を揺るがす大きな課題となっています。
しかし、そんな中で今年は少し明るいニュースもあります。2024年冬から2025年春にかけてのシラスウナギ漁は、国内採捕が比較的順調で、近年にない豊漁となりました。これにより、今年は質の高いうなぎが、少しお求めやすい価格で安定して供給されることが期待されています。この機会に、改めて日本のうなぎ文化の価値を見直してみてはいかがでしょうか。
「養殖」と「天然」の違いとは?日本の養殖技術の粋
うなぎには、川や湖で自然に育つ「天然」と、人の手で育てられる「養殖」があります。流通量の1%未満と言われる天然ものは、育った環境によって味が異なり、野趣あふれる力強い風味が魅力です。
現在私たちが口にするうなぎの99%以上を占めるのが養殖うなぎです。そして、この養殖技術こそが、現代の日本のうなぎ文化を支える屋台骨と言えます。日本の養鰻家たちは、水質、水温、餌などを徹底的に管理し、長年の経験と研究によって、天然ものに勝るとも劣らない高品質なうなぎを育て上げています。
直近では、水産研究・教育機構が完全養殖のうなぎを量産するのに必要な基幹技術の特許を取得しています。稚魚を従来の10倍の多さで飼育できる水槽に関する特許と、安価に高成長が見込める餌に関する特許の2つ。天然資源の保護意識が高まる中、環境負荷の少ない養殖に期待が集まりますね!
うなぎを食べに行こう!名産地エリア7選
日本の養鰻家たちが情熱を注ぐ、国産養殖うなぎの名産地。その土地ならではの味を求めて訪れたい、おすすめのエリアを7つご紹介します。
1. 鹿児島県(大隅半島エリア) 言わずと知れた、うなぎ生産量日本一の王国。シラス台地から湧き出る豊富な地下水と温暖な気候を活かし、大規模かつ高品質な養殖が行われています。肉厚で脂の乗ったうなぎは、まさに王者の風格です。
2. 愛知県(西尾市一色町) 「一色産うなぎ」として全国に名を馳せるブランド産地。矢作川の清流水を引き込み、天然の川に近い環境で育てるのが特徴。身が締まり、うなぎ本来の旨味が濃いと評判です。
3. 宮崎県 鹿児島と並ぶ南九州のうなぎ処。温暖な気候のもと、徹底した管理で育てられる宮崎のうなぎは、品質の高さに定評があります。ふっくらとした食感と上品な味わいが楽しめます。
4. 静岡県(浜名湖周辺エリア) 日本のうなぎ養殖発祥の地。100年以上の歴史で培われた伝統と技術は、今もなお健在です。歴史に思いを馳せながら、老舗の味を堪能するのも一興です。
5. 高知県 「最後の清流」四万十川を有する高知県では、その清らかな地下水を利用した養殖が行われています。川魚の食文化が根付く土地柄、うなぎの扱いも逸品。さっぱりとしながらも深い味わいが特徴です。
6. 岡山県 旭川、高梁川、吉井川の三大一級河川がもたらす豊かな水資源を活かし、近年評価を高めている産地。夏はあっさり、冬はこってりと、季節に応じた味わいのうなぎ作りに取り組んでいます。
7. 徳島県 四国三郎・吉野川の豊かな伏流水など、恵まれた水環境で育てる徳島のうなぎ。ストレスの少ない環境で育つため、皮が柔らかく、上質な脂が特徴。新たなブランド産地として注目されています。
うなぎを取り巻く課題を理解し、その価値を改めて見つめ直す。今年の夏は、日本の養鰻家たちが守り育てた絶品の国産うなぎを、ぜひ産地で味わってみてください。それは、夏の元気をチャージするだけでなく、日本の大切な食文化と地域を応援する、美味しくて意義のある体験になるはずです。
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Edit by 高崎澄香