前回の記事では、常識を覆す“一流”の美味しさを誇るブランド真鯛「鯛一郎クン」をご紹介しました。この奇跡のような鯛は、一人の男の、父への敬意と挑戦心、そして「養殖」という仕事への深い哲学から生まれました。今回は、その中心人物である株式会社タイチ代表・徳弘多一郎さんの30年以上にわたる「養殖道」の物語をお届けします。
伝説だった父の鯛と、受け継がれた哲学
徳弘多一郎さんの養殖人生は、偉大な父の背中を追うことから始まりました。株式会社タイチの前身である徳弘水産は、1959年に真珠養殖業として創業し、1973年に真鯛養殖へと転換しました 。多一郎さんのお父様が育てた鯛は、市場で業者たちが値を吊り上げてでも欲しがるほどの、まさに伝説の逸品だったそうです。
「父の育てていた鯛を超えたい」 。その一心で経営を継いだ多一郎さんの胸には、美味しさの追求と同時に、両親から受け継いだ大切な教えがありました。それは「陰徳を積む」ということ 。人知れず善い行いを積み重ねていれば、お天道様は見ていてくれる。この誠実な姿勢こそが、のちに鯛一郎クンと養殖道そのものを形作っていくのです。

30年の格闘。「技術なくして生き残る道なし」
経営を継いだ多一郎さんが直面したのは、かつての養殖業が抱える課題でした。当時の主流であった生餌での養殖は、海の環境を汚してしまうという大きな問題を抱えていたのです 。多一郎さんは「技術なくして生き残る道なし」 と固く決意し、海洋汚染の少ない固形飼料への転換という、当時としては大きな挑戦に踏み出します。
それは「技術で魚を変えられる時代の幕開け」でした 。養殖独特の臭みを消し、脂の質までも変える究極の餌を求め、開発に着手します 。その格闘は30年にも及びました 。思うような結果が出ない時、多一郎さんを支えたのはご両親の教えだったそうです。諦めずに誠実な仕事を続ける中で、道を拓く技術や人に巡り会っていきました。

「鯛一郎クン」の誕生と、次代へ広がる革命の輪
長い研究開発の末、2003年、ついに理想の鯛「鯛一郎クン」が誕生します 。それは、父の鯛を超えるという夢が結実した瞬間であり、多一郎さんが起こした「養殖革命」の狼煙でした。多一郎さんはできるだけ鯛一郎クンを扱ってくれたお店に足を運び、コミュニケーションを取っていらっしゃるそうです。
株式会社タイチの経営理念は、まさにチームのあり方をそのまま表現していることが分かります。

漁業の平均年齢が50代以上と言われる中、執行役員として現場責任者を務めるのは、最年少の稲住さん。稲住さんは「仕事が楽しいし、任せてもらえているのは大きい」と熱い想いで真っ直ぐに鯛と向き合っていました。また、多一郎さんの娘である徳弘泰子さんは、営業や広報として全国を奔走。「鯛一郎クン」の物語をSNSなどを通じて多くの人へ届け、新たな縁を紡いでいます。
その縁は、地域にも革新をもたらしました。東京で有名シェフのもと腕を磨いていた料理人が「鯛一郎クン」の素晴らしさに惚れ込み、宇和島へ移住。これまで地元では食べられる店のなかった「鯛一郎クン」を日常的に味わえる「嶋-shima-」を開業し、多くの人が訪れています。 コロナ禍で卸先の飲食店が営業停止となった際には、100年続くレストラン「マルブン」とのコラボが実現。クラウドファンディングでオリジナルの冷凍ピザを開発し、大成功を収めました。これを機に通信販売という新たな挑戦も始まり、より多くの人に「美味しい幸せ」を届けるきっかけになりました。ちなみにマルブンさんでは、鯛一郎クンが上にどん!と贅沢に乗ったパスタを食べることができます。

一杯の鯛に宿る、誠実な養殖道
多一郎さんの挑戦は、誠実さを貫く「養殖道」となり、ついには唯一無二のブランド「鯛一郎クン」をつくり上げました。今は若い世代や地域を巻き込み、新たな未来を創造しています。
今鯛一郎クンは日本だけでなく、海外でも評価を受けています。鯛一郎クンはその美味しさを通して、多一郎さんがこだわり抜いた美味しさの秘密や養殖のあり方を世界に届けていくでしょう。
多一郎さんが人生をかけて追い求めているのは、ただの美味しい魚ではありません。それは、自然と、人と、未来と誠実に向き合う、養殖業の新しい「あり方」そのもの。これからも株式会社タイチさんの挑戦は続きます。

株式会社タイチ:https://taichiro-kun.com
公式Instagram:https://www.instagram.com/taichi.inc/
取り扱い店舗はこちらから:https://taichi-1.notion.site/694b201071c1491a968905b15c780901
ブランド鯛「鯛一郎クン」については前回の記事も併せてご覧ください。
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Edit by 高崎澄香