公式サイトより引用
銀座のど真ん中に現れた「Ginza Sony Park」。先日銀座を訪れた際に、人々が行き交う数寄屋橋交差点の近くで、無機質さのあるこの建物に違和感を感じ足を止めました。入ってみるとちょっと不思議で、でも心地よい空間が広がっていたのでご紹介させていただきます。
“ビル”ではなく“公園”という発想
Ginza Sony Parkを訪れてから色々と調べてみると、Ginza Sony Parkは「街に開かれた施設」をコンセプトに、東京・銀座で50年以上にわたって続いたソニービルを建て替えるプロジェクトの最終形とのこと。
1966年、ソニーのファウンダーのひとりである盛田昭夫さんによってつくられたソニービル。そこには、盛田さんが「銀座の庭」と呼んだ10坪のパブリックスペースがあったそうです。「銀座の庭」を「銀座の公園」として拡張することで、銀座の街に新しいリズムをつくり、来街者の方が入りやすく、さまざまな楽しみ方ができる場にしようと、ビル建て替えのプロジェクトが進められてきたようです。
普通なら「そうと決まれば新しくビルを建てるぞ!」と、そんな発想になりがちですが、ソニーは違いました。いったんビルを解体し、その跡地を「公園」として数年間開放する、そしてその後「Ginza Sony Park」を竣工するという、二段階のプロセスを踏むという形でプロジェクトを組み立てたのです。

TOKYO UPDATESより引用
「公園」としてその場を開放した2018年から2021年までの約3年間、ここは人々が集いゆったりと寛ぐことのできる空間になっていました。公園には植物が多く植えられており、その花壇や土留めの縁が幅広く設計されていて、そういった工夫が人々に公園で一息つくきっかけを与えてくれていました。そして公園に植えられた世界各地から集めた植物は、なんと購入できたそうです。(知らなかった…)植物が購入される度に、別の植物が用意され公園の表情が変わるというのもあまり他にはなくて面白い座組だなと思いました。
また、トレーラーハウスを改造したユニークなサテライトスタジオ、「TOKYO FM|Ginza Sony Park Studio」も置かれ、直接生放送なども行われていたそうです。
この公園では、他にも定期的に展示や音楽ライブなどが催され、コロナ禍の期間があったにもかかわらず来場者数は854万人にも及んだとのこと。
そして今年、2025年1月に新生Ginza Sony Parkが立ち上がりました。
建築のコンセプトは、「ジャンクション建築」
Ginza Sony Parkは、地上5階・地下4階という立体的な構造。(※地下4階は機械室)でも、どこにも“ただの商業ビル”らしさはあまり感じません。地上と地下、内と外がスムーズに交差するように設計されていて、不思議な感覚になります。1階フロアは道路と地続きになっていて、この空間自体が銀座の街に染み出しているかのように感じます。

2階に上ると広場のような空間になっていて、3階・4階は美術館のギャラリーのような空間が広がっています。5階は屋上。他の建物に比べれば高さは抑えられてはいますが、銀座をこの絶妙な高さから眺めることができるのはここだけかもしれません。

Ginza Sony Parkの持続可能な構想
1階から5階まで上がって分かったことは、テナントは一切入っていないということ。
(ちなみにB2は展示スペース、B3にはカジュアルダイニング”1/2 (Nibun no Ichi)”という、「銀座を楽しむための”1/2 料理”」というコンセプトで一人前の約1/4サイズの料理を2品盛り付けたプレートを提供する面白いお店が入っています)
ソニーの自社ビルとはいえ維持費などはどうするのだろうと思い調べてみたところ、各種報道によれば、収入はそこで行われるプログラムの実施を通じて、フロアの利用料や企画料、壁面への広告料などでまかなうとのこと。
例えば、ソニーグループに所属するアーティストがここでコラボ展示等を行うことによって、ソニービルに対して利用料を払う、という流れで、その展示に訪れたファンが、後々アーティストのグッズやCD、チケットを買ったりすることで長期的に見てお金を回収するといった仕組みになっています。
4月20日から、6組のアーティストとともにつくるクリエイティブな体験型プログラム「Sony Park展 2025」が開催されるようなのですが、入場は無料とのこと。(入場予約は必要。ただ今後開催される展示によっては有料になる場合もあるそうです。)
入場料が無料となると足を運ぶことに対するハードルはかなり低くなりますし、ファンではないけど行ってみたらめっちゃ好きになった!という未来のファン、いわゆる「見込み客」のような存在を作ることにも繋がります。
展示を有料にしたりテナントを入れて物販をするなど短期的に利益を稼ぐことは簡単かもしれませんが、今後いくらアーティストの展示を行ったとしても本当にその展示を見たいと思うファンしか訪れない場所になってしまう可能性も考えられます。
などなど色々なことを加味し、この長期的な視点で利益が出るように開発を調整していく仕組み作りは、ソニーだからこそ出来ることだなぁと感じました。
長期的な繋がりを作り、誰かの「行ってみたい」を生む仕組み。Ginza Sony Parkは、都市と企業、そして生活者との関係を確実にアップデートし続けている場所になっていました。銀座に訪れることがあれば、ぜひこの空間を味わってみてください。
Ginza Sony Park
〈住所〉
〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目3-1
〈開園時間〉
11:00 – 19:00 ※アクティビティにより、開閉園時間が変更になる場合あります。
〈アクセス〉
JR:JR「有楽町駅」中央口より 徒歩約5分
地下鉄:東京メトロ銀座線「銀座駅」銀座四丁目交差点改札より 徒歩約3分
東京メトロ丸ノ内線・日比谷線「銀座駅」数寄屋橋交差点改札または中央改札より 徒歩約2分
※地下コンコースB9出口直結(利用時間 8:00‐22:00)
詳しくはhttps://www.sonypark.com/about/