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競争から協調へ 温もりが生んだ奇跡の黒川温泉【熊本県】

熊本県の山懐深くにある黒川温泉を知っていますか?旅好きの友人に九州でお勧めの温泉を聞いたら迷わず「黒川温泉!」と言われたのを思い出します。関東に住む筆者としてはなかなか縁がなかったのですが、とっても素晴らしい温泉”街”だったので、紹介させてください!

湯けむりの誘う、心地よい街並みへ

阿蘇の緑に抱かれるように佇む黒川温泉郷。川のせせらぎと共に立ち上る湯けむり、周囲の自然と調和する落ち着いた宿のたたずまい。派手なネオンもなく、どこか懐かしく、洗練された統一感のある街並みを歩いているだけで、まるで一つの大きな旅館の中を散策しているよう。映画のセットのような、非日常空間にとっぷりと浸かれるような気分です。

迷宮の洞窟風呂と入湯手形

この街の湯を心ゆくまで楽しむのに欠かせないのが、「入湯手形」です。杉の間伐材で作られた、温もりのある手形一つで、温泉街に点在する約25軒もの旅館の中から、お好みの露天風呂を三ヶ所も巡ることができます。湯めぐりの途中、私が訪れたのが、全長30メートルもある洞窟風呂で有名な新明館さん。薄暗い洞窟を進むのは、まるで迷路を探検しているみたいでワクワクしました。そして、そのダイナミックで野趣あふれる空間の素晴らしさに圧倒されたんです。この手形が、多様な旅館の風呂を自由に巡る楽しさを生み、そしてこれは黒川温泉が街全体で旅人を迎え入れ、楽しませようとしている証拠なのだと知りました。でも、なぜ黒川温泉はこれほどまでに一体感があり、多くの人々を惹きつける特別な場所になったのでしょうか?

危機が生んだ転換点と、一人の若者の情熱

今でこそ人気の黒川温泉ですが、かつては厳しい存亡の危機に瀕していました。規模が大きく利便性の高い近隣の大型温泉地に客を奪われ、小さな黒川温泉は長い間、低落傾向が続いていたのです。そんな中で、黒川温泉は一丸となって「再生」の道を選びます。それは競争ではなく、「温泉街全体を一つの宿に」という協調の精神でした。その情熱的な立役者の一人が、当時まだ24歳だった後藤哲也さんという方。魅力ある風呂を作りたいという一心から、なんと3年の歳月をかけ、ノミ一本で洞窟風呂を掘り上げたそう。(命をかけた地域活性では!?)
周囲の雑木を植栽するなど自然との調和を徹底した露天風呂も次々と生み出し、これが温泉街全体の景観づくりの規範となっていったとのこと。これが、わたしが入った新明館さんの洞窟風呂だったと後ほど気づきました。

『本当の温泉街』が示す、地域づくりの未来

後藤氏の情熱に象徴されるような、各宿の創意工夫と「温泉街全体で温泉郷を磨き上げる」という強い共同体意識、そしてそれを形にした入湯手形や統一景観の整備。これらの取り組みが、低迷していた黒川温泉を約10年という歳月をかけて、存亡の危機から「黒川温泉」という名を全国に知られる存在へと押し上げたのです。黒川温泉が今、多くの人を惹きつけるのは、まさにこの「一体感」があるからだと感じました。個別の宿も素晴らしいけれど、温泉街全体がお客様を楽しませようという温かい心意気に満ちた、本当の意味での「温泉街」。ここには、危機を乗り越え、情熱と知恵、そして強い絆で自分たちの地域を創り上げてきた人々の物語があります。黒川温泉は、地域づくりの無限の可能性を私たちに示してくれる、人が集まるモデルのような場所だと思いました。

この温かい湯けむりと、地域の人々の熱意に触れに、あなたも一度、黒川温泉を訪れてみませんか? 簡単に行ける温泉地とは異なる体験ができるはずです! 

トップ画像・文章内画像参照:黒川温泉観光旅館協同組合 黒川温泉公式サイト

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Edit by 高崎澄香

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