群馬県高崎市に根を下ろし、明治三十年(1897年)の創業以来、百有余年にわたり伝統の染色技術を守り続けている中村染工場。4代目代表の中村純也氏に「注染」による手ぬぐいづくりと産業への思いを訊ねてきました。デジタル化の時代の波の中、周囲の染工場が姿を消していく中、その伝統の灯を守り続けている中村染工場の魅力に迫ります。
百年の歴史を紡ぐ

中村染工場の歴史は、1897年、初代中村勝太郎氏がこの地に創業したことから始まりました。当初は、のれんや半纏、前掛けなど、地域の人々の生活に欠かせない染物の製造を手掛けていました。1953年には、二代目中村満善氏が代表取締役に就任し、有限会社中村染工場として法人化。その後、名入れタオルの加工も事業に加わりました。近年では、四代目となる中村純也氏の代で、オリジナルの手ぬぐいの製造・販売をスタートさせ、新たな展開を見せています。2013年には、三代目の中村仁太郎氏と純也氏が共に「群馬県ふるさと伝統工芸士」に認定され、注染手ぬぐいも「群馬県ふるさと伝統工芸品」としての指定を受けるなど, その功績は高く評価されています。
唯一無二の染色技法「注染」:熟練の職人技が光る

中村染工場の代名詞とも言える「注染」は、明治時代に考案された日本独自の染色技法です。それまで主流だった一枚ずつの手染めに比べ、より効率的な量産を可能にするために生まれました。その最大の特徴は、型紙と防染糊を使用し、生地の上から染料を注ぎ込んで染めるという点です。この技法により、生地の表裏両面に染料がしっかりと染み込むため、裏表のない美しい仕上がりとなるのが大きな魅力です。

注染の工程は、まさに熟練の職人による手仕事の結晶です。まず、繊細な図案に合わせて、柿渋を塗った丈夫な和紙で型紙を作成。次に、生地(主に晒)を数十枚重ね、型紙を置いてヘラで丁寧に防染糊を塗布する糊置きという作業を行います。この工程の出来栄えが、最終的な製品の美しさを大きく左右するため、熟練の技術が不可欠です。塵が一つでも入ってしまうと、色むらができてしまうのです。その後、染料が混ざり合わないよう、防染糊で丁寧に土手を作ります。そして、注ぎ口の細い薬缶で、土手で囲まれた部分に色とりどりの染料を注ぎ込み、下からコンプレッサーで吸引する注染という工程へと進みます。この作業を裏側からも同様に行うことで、生地の隅々まで染料が浸透し、表裏のない美しい染め上がりを実現します。染め終わった生地は、水洗いの工程で余分な染料と糊を丁寧に洗い流し、脱水後、天日でじっくりと乾燥。最後に、乾燥した生地を反物状に巻き取り、プレスして一枚の手ぬぐいの長さに裁断する仕上げの工程を経て、ようやく製品が完成します。
デジタル印刷が市場に出回っている昨今、このように丁寧に染め上げる職人の技術と守ってきた伝統の灯を紡いでいくことが地域の垣根を超えた、日本の誇りに繋がっていくのではないでしょうか。

受け継がれる職人の魂
中村染工場の手ぬぐいは、単なる日用品というだけでなく、職人の熟練の技と温かい心が込められた、まさに「作品」と呼ぶにふさわしいものです。明治時代から続く伝統の注染技術を継承し、群馬県内で唯一その技を守り続ける中村染工場は、高崎の文化を支えるかけがえのない存在です。手仕事ならではの温かみと、洗練されたデザインが魅力の手ぬぐいは、日常使いはもちろん、お土産や贈り物としても最適。
昨今、老若男女に人気の「サウナ」にも。
お洒落なサウナハットやサウナタオルが大量に販売されていますが、一つの選択肢に「手ぬぐい」が入って来ると考えています。実際、筆者もサウナによく行くのですが中村染工場で購入させていただいた手ぬぐいを重宝しています。サウナハットにもなり、身体を洗え、身体を拭くこともできるという一人何役も。そして生地自体は薄いためカバンに入れても幅を取りません。

地域社会との連携や伝統工芸の普及活動にも積極的に取り組み、高崎の文化的な魅力を高める役割も担っています。一枚の手ぬぐいには、職人の技と情熱、そして高崎の豊かな歴史と文化が凝縮されています。ぜひ、あなたも中村染工場でお気に入りの一枚を見つけてみてください♪
中村染工場 基本情報
所在地:
〒370-0816 群馬県高崎市常盤町40番地
※工場ならではのアウトレット品も置いてあります。工場まで足を運ぶことが難しい方は、JR高崎駅構内の「イーサイト高崎 群馬いろは」でも一部購入することができます。
電話番号:
027-322-5202
営業時間:
10:00 ~ 17:00
(日祝日、土曜日不定休)
ウェブサイト: https://nakamura-some.com/
お立ち寄り情報:
中村染工場にお立ち寄りの際におススメのカレー屋さん
curry stand baimai: https://www.instagram.com/currystandbaimai
※baimaiさんでも中村染工場でつくられたオリジナルbaimai手ぬぐいを購入できます♪

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Edit by 長嶺将也