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断捨離から“シェアリング”へ。20代に広がる『手放す美学』

私は、断捨離という行動に対して、意識高い系と言いますかちょっとストイックな人がするイメージを持っていたのですが、今ではSNSで気軽にシェアされる日常の風景になってきました。私にもミニマリストの友人がいるのですが、その子は何か1つモノを購入すると今まで使っていたものは必ず捨てるようにしているという話を聞き、私には真似できないなぁと内心思っていました。しかしその子は、いつも身軽で迷いが少ないように見えて、ミニマリズムという思考が関係しているのかな?と思ったり、モノを減らすことが、ただ部屋を整えるだけではなく自分の“選ぶ力”や“判断力”を磨いているのかな?と考えるようになりました。

20代の間では、「手放す=気持ちいい」「持たない=かっこいい」という価値観が広がり、モノを持たない暮らしが“個性”や“美意識”の表現にすらなりつつあるようです。そして今、そんな彼らが次に選んでいるのが、「ただ手放す」のではなく、「シェアする」ことで新しい価値を生むという生き方です。それは、単なる整理整頓ではなく、“他者と循環する”新しいエシカルライフのカタチだと感じます。今回は、そんな「手放す美学」に共鳴するZ世代の動きに注目してみたいと思います。

“モノを持たない”が当たり前の世代

Z世代は、子どもの頃からフリマアプリやSNSを通してモノのやりとりに慣れ親しんでいます。実際、メルカリのユーザーのうち約30%は20代で、最も利用率の高い世代です。中古品に抵抗がなく、“誰かが使ったモノ”を再び使うことにポジティブな価値を見出しています。また、電通のZ世代意識調査でも、「所有しなくてもよい」という選択肢に肯定的な回答が目立ちました。「新品じゃなくてもいい」「借りる・シェアすることが当たり前」という感覚は、物質的な豊かさよりも“心地よさ”や“自由さ”を優先する世代ならではの美学です。

日本経済新聞より引用

“手放す”ことで広がる、心のスペース

「なんか最近、気持ちがごちゃごちゃするな」と感じた時、部屋の中を少し片づけただけで心が軽くなるような、スッキリしたなと感じた経験はありませんか?心理学では「視界に入るモノの量が多いと、脳が複数の刺激を同時に処理しようとして認知的リソースが分散し、ストレスや集中力低下につながる」と言われています。つまり、モノを減らすことは、気持ちを整えるためのセルフケアの一つでもあるのです。最近では、InstagramやTikTokでも「#整える暮らし」(1.4万件以上)「#ゆるミニマリスト」(7.5万件以上)といったタグのついた投稿が増えていて、ただ部屋をきれいにするのではなく、“心を整える手段として手放す”という感覚が浸透してきているのを感じます。

“シェア”が日常になる時代

2010年代の断捨離ブームを経て、今の若者は「モノを減らす」だけでなく、「手放すことで誰かとつながる」喜びを見出しています。(「ときめき」を基準にモノを残すというポジティブな基準が話題を呼んだ、「こんまり」こと近藤麻理恵さんの著書『人生がときめく片づけの魔法』が出版されたのも2010年でした。)たとえば、洋服のレンタルサービス「airCloset」では、主に20〜30代の女性ユーザーが多く、クローゼットを圧迫しない「持たないおしゃれ」が定着しています。また、腕時計レンタルの「KARITOKE」も同様に、若年層の間で「所有しないで楽しむ」選択肢として拡大中です。さらに、地域では大学主催の“0円マーケット”や“おゆずり会”などが広がっており、参加者たちは「まだ使えるから捨てるのはもったいない」「誰かに使ってほしい」という気持ちで、自然と“モノを巡らせる”行動を取っています。

“美しく手放す”ことが、新しい豊かさに

リクルート住まいカンパニーの調査でも、20代の約6割が「定期的にフリマアプリでモノを手放している」と回答し、“モノを手放すこと自体が習慣化”していることが分かります【⁵】。それは決して「足りないから我慢する」のではなく、「自分にとってちょうどいいものだけを選ぶ」新しい豊かさの感覚なんだと感じます。そして「次に使う人のことを考えて手放す」という姿勢こそ、Z世代の“手放す美学”なのではないかなと思います。

もし手元に、まだ誰かの生活にプラスの影響を与えるであろうモノがあれば、“手放す”という優しさに是非挑戦して見てください!それは、誰かの生活に良い影響を与えるだけではなく、自分自身の心にも良い影響があるかもしれません。“捨てる”ではなく、“つなぐ”。“減らす”ではなく、“めぐらせる”。そんな「手放し方」を選ぶ人が増えていったら、この世界の未来にも繋がっていく気がしています。

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