宮城県本吉郡。人口11,264人の小さな地域に南三陸町という、この郡唯一の町があります。
ここは2011年3月11日の東日本大震災で甚大な被災を受けた地域です。
「家族が、友人が、隣の家のあの人が…あの日を境に会えなくなってしまった人がいる」という記憶を持って生きている人が多い場所です。政府による復興支援金によって、町は盛り土され、人々が生活できる環境に戻っています。しかし、町役場や漁港、学校をはじめ飲食店や人々の憩いの場所は津波によって流され、「遊べる場所」や「はたらける場所」は激減しました。加えて、同地域内に大学がないこともあり、若者人口の流出が後を絶ちません。
しかし、最近は地元の人たちが戻り、観光協会が若者に頼り、老若男女問わず、これからの町づくりを行うことで、地域外出身の若者の流入や地域未来留学という制度を活用して、地域外から地域の高校に留学する学生も増えています。
今日は、そんな南三陸町に戻り、漁師として活躍する阿部和也さんをご紹介させていただきます。
首都圏企業からの脱サラ。南三陸に戻る。
FISHERMAN’S KITCHEN代表の阿部和也さんは、2020年に首都圏企業で働くという道から、家業の牡蠣・ワカメの養殖を南三陸町で継ぐことを決めました。広告代理店で日々クライアントやPC、パワポの資料と向き合う生活から、南三陸町に戻った翌日からはじまるのは力仕事。電車移動の生活から、車移動の生活。頭も身体も使う毎日からのスタートでした。
しかし、阿部さんはこの地域の将来を見据えて動き続けました。それは、南三陸町に戻ってきて見た光景に寂しさを覚えたからだと言います。阿部さんの会社が漁船を停泊させている場所には、震災前5隻の漁船がありました。高台から見下ろし、悠々と歩を立てる5隻の漁船。それはもう、なんと力強く、美しかった光景か。しかし、今その光景はありません。この漁港には阿部さんの漁船、ただ1隻のみです。
漁場はあるのに、漁船がない。大きな漁場を一人で、まして高齢化が著しい地域の漁場他の漁場との連携なしで運営するのはほぼ不可能です。そこで阿部さんは先輩漁師と立ち上がり、相当な数、時間の話し合いを経て、地域の漁場を1/3まで減らすだけでなく、五条を減らしたことによって、牡蠣あたりの品質が大幅に向上。日本初の牡蠣の漁場に関する国際認証(ASC認証)を取得することに成功しました。
この国際認証取得を機に、この地域での漁師のワークスタイルは変革期を迎えます。
3Kからのお別れ
一次産業、特に漁師(猟師)の仕事は3K(きたない、きつい、危険)と言われてきました。しかし、前述の国際認証を取得したことによって、牡蠣養殖の品質が大幅に向上。品質担保されたものを、高単価で市場に卸すことができるようになりました。結果的に、子供たちと朝ごはんを食べて、学校の送り迎えもできて、夕飯もお風呂も一緒に過ごすことができるようになったと言います。
漁師になると決めたときには、家族、子供たちとの生活時間は被らないだろう…サラリーマン時代のような朝一出社、夜遅く皆が寝た後の帰宅になると思っていたのとは真逆の生活を過ごすことができています。
”複雑”な過程と”シンプル”なアウトプット。
阿部さんの生き方には、このような要素が詰まっているのかもしれません。
皆がわかりやすいものはシンプルなこと。しかし、そのシンプルさを提供するためには複雑な事柄がたくさん発生。「漁師としての道を生きる」ということはシンプルな解かもしれません。ですが、ここに至るまでにはサラリーマンとしての社会人経験、震災被災、漁場縮小の話し合い、など多くの複雑さを通ってきています。
シンプルな生きかたこそ、かっこいい
「本物はシンプル。」
このシンプルな想いのもと、行き、漁業に向き合い、開発した商品があります。
「まるごと牡蠣ソース」です。
ごろっと大きな牡蠣がシンプルに使われています。牡蠣が苦手な人でも、牡蠣を好きになってくれるきっかけに…との想いで開発された商品です。牡蠣好きの人はもちろん、苦手な人でも臭みがなく、一度火を通した牡蠣のため、安心して食べることができます。
そして、なんと、2024年11月21日に開催された「第11回新東北みやげコンテスト」にてFISHERMAN’S KITCHENの【まるごと牡蠣ソースギフトセット】がなんと最優秀賞を獲得しました!(阿部さんの漁場にお伺いする予定の前日だったため、お伺いさせていただいた日は各所からのお祝い連絡と発注連絡で大忙しでした。)
シンプルに。漁師として生きる。家族との時間を大切に過ごす。
ありのまま、頑張りすぎない。
このシンプルさに、人間の生きるという美しさと素晴らしさが詰まっているのかもしれません。
※「まるごと牡蠣ソースセット」は漁獲高、加工人員に限りがありますので品切れになっている可能性も多々ございます。気になる方は逐次、入荷確認をお願いいたします。
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Edit by 長嶺将也