「都会を離れて、田舎で働きたい！」
以前よりもこういった考えを持つ方は増えているように思います。
わたしは東京から千葉の里山に移住して事業を立ち上げました。実際に暮らしてみると、人と自然が溶け合う暮らしが、人生を豊かにしてくれることを実感しています。
都市部を離れてキャリアを築く方法は起業の他に転職、家業を継ぐという選択肢が主ですが、その中でも近年、特に注目を集めているのが「地域おこし協力隊」という制度です。本記事では、地域おこし協力隊として地域で活躍し、自分らしいキャリアを築くためのヒントを、制度の概要から任期後のキャリア戦略まで解説します。
地域おこし協力隊とは？
地域おこし協力隊は、都市地域から過疎・山村地域などへ住民票を移動し、地域で生活しながら、様々な地域協力活動に従事する制度です。2009年度に総務省によって創設されました。
隊員のミッションは、地域によって多岐にわたります。
- 地域資源の活用: 農林水産物のブランド化、特産品の開発・販売促進、観光資源を活かしたツアー企画
- 地域産業の担い手: 伝統工芸の技術継承、耕作放棄地の活用、鳥獣被害対策
- 住民の生活支援: 高齢者の見守り、子育て支援、移住定住のサポート
隊員は、地方自治体から「地域おこし協力隊」として委嘱を受け、最長3年間活動します。その身分は自治体の非常勤職員や委託契約が一般的で、活動に必要な報償費（給与）や経費が支給されるため、収入の心配をせずに地域活動に専念できるのが大きな特徴です。
なぜ今、協力隊が8,000人規模に急増しているのか？
この制度は年々広がりを見せ、2025年度は約8,000人もの隊員が活躍する見込みです。なぜ今、これほどまでに地域おこし協力隊が注目されているのでしょうか。
その背景には、いくつかの社会的な変化が考えられます。
- 価値観の多様化: 新型コロナウイルスの影響もあり、多くの人が自身の生き方や働き方を見つめ直しました。物質的な豊かさだけでなく、人とのつながりや社会への貢献に価値を見出す人が増え、地方への関心が高まっています。
- 働き方の変革: リモートワークの普及により、必ずしも都心にいる必要がなくなりました。これにより、「地方で暮らしながら、これまでのスキルを活かして働く」という選択肢が現実的なものとなりました。
- 起業支援: 協力隊の任期中や任期終了後には、国から最大100万円の起業支援金が交付される制度があります。単なる移住ではなく、「地域での起業」という明確な目標を持つ人にとって、協力隊は資金面での不安を和らげ、事業の立ち上げをスムーズにするための「滑走路」としての役割を果たしています。
私のように、起業を視野に入れて移住を考える者にとって、地域に溶け込みながら事業の種を見つけ、かつ活動資金の支援も受けられるこの制度は、非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
地域おこし協力隊になるには？
では、どうすれば地域おこし協力隊になれるのでしょうか。
最も一般的な方法は、移住・交流推進機構（JOIN）が運営するウェブサイトで募集情報を探すことです。全国の自治体の募集情報が一元的に掲載されており、活動内容や待遇、募集地域など、自分の希望に合った案件を探すことができます。
気になる募集を見つけたら、各自治体の指示に従って応募します。多くの場合、書類選考と複数回の面接を経て採用が決定します。面接では、「なぜその地域なのか」「自分のスキルや経験をどう活かせるか」「3年後の目標は何か」といった点を問われることが多く、地域への理解と自身のキャリアプランを明確に伝えることが重要です。
by 総務省HP 「見つかる！出会える！理想の暮らし 地域おこし協力隊になるために」
活躍の鍵は「任期後」を見据えたキャリア戦略
地域おこし協力隊の経験は、その後の人生を大きく左右する可能性を秘めています。データによれば、任期終了後も約7割の隊員が同じ地域に定住し、起業したり、地元の企業や団体に就職したりと、地域に根差したキャリアを歩んでいます。
しかし、これは裏を返せば、残りの3割は定住に至っていないという現実も示しています。「なんとなく地域に貢献したい」「今の仕事から離れたい」といった漠然とした動機だけで飛び込んでしまうと、「キャリア迷子」に陥ってしまう危険性があります。
地域おこし協力隊として本当に活躍し、任期後も輝くためには、制度を「目的」ではなく、理想のキャリアを実現するための「手段」と捉え、明確な戦略を立てることが不可欠です。
成功するための3つのポイント
- 目的意識を明確にする: 「3年後にどうなっていたいか」を具体的に描きましょう。「農家になりたい」「ゲストハウスを経営したい」「デザイナーとして独立したい」など、目標が明確であればあるほど、3年間の活動内容も具体的になり、地域でのコミュニケーション方法も見えてきます。
- 「自分のやりたいこと」と「地域のニーズ」をすり合わせる: 自分の理想だけを追い求めても、地域に受け入れられなければ活動は長続きしません。地域の課題は何か、住民は何を求めているのかに真摯に耳を傾け、自分のスキルや情熱を掛け合わせることで、初めて地域に必要とされる存在になれます。
- 3年間を「学びの期間」と捉える: 協力隊の期間は、給与をもらいながら事業の準備やスキルアップができる、いわば「社会人インターンシップ」のようなものです。起業に必要なマーケティングや会計の知識を学んだり、地域のキーパーソンとの繋がりと、任期後のためのインプットとアウトプットを意識的に行うことが成功の鍵となります。
おわりに
地域おこし協力隊は、都市部とは異なる環境で、社会貢献と自己実現を両立できる非常に魅力的なキャリアの選択肢です。しかし、その成功は、地域へのリスペクトと、自分自身のキャリアに対する明確なビジョンにかかっています。
この記事が、地域での新しいキャリアに一歩踏み出そうとしている方々にとって、その背中をそっと押す一助となれば幸いです。地域の未来を創る主役は、あなたかもしれません。
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Edit by 高崎澄香
