「田舎で働きたい」と考えた時。よく提示される選択肢としては、地銀・公務員・第一次産業・起業・リモートワークができるIT/WEB関係の仕事…といったところでしょうか。
最近は地域おこし協力隊として移住する方も増えていますが、定住率は7割未満。移住してからも理想の求人にありつけなかったり、長期で安定した職業に就くことは難しいと判断して都市部に戻る方も多いです。
移住しやすいリモートワークで働く方の中でも、出社回帰の流れがあった時の不安や、地域との接点が持てずにどっちつかずになってしまっているという声もあります。
今回は非IT職種でも場所を選ばない”ポータブルスキル”が活かせる職業と、「田舎で働く」ためのキャリアの考え方をご紹介します!
都会と田舎の「仕事」のカタチの違い
田舎で理想の仕事が見つからない…その背景には、都市部と地方での働き方の構造的な違いがあります。
都市部では、企業活動が細分化・専門化されているため、「〇〇職」といった形で求人が明確化されています。多くの人は、用意された求人の中から自分のスキルや経験に合うものを選んで応募します。
一方、田舎ではどうでしょうか。特に中小企業や個人事業主が多い地域では、一人が複数の役割を担う「マルチタスク」が当たり前。総務をしながら広報もする、営業をしながら商品開発も手伝う、といった具合です。
そのため、「この業務だけやってほしい」という明確な求人として顕在化しづらいのです。しかし、これは仕事がないという意味ではありません。むしろ、あらゆる場面で「人手」が求められており、”求人化されていない仕事”が無数に存在していると言えるのです。
場所を選ばない!田舎でこそ輝くポータブルスキルと職業
ITスキルがなくても、全国どこでも通用する「ポータブルスキル」はたくさんあります。特に、地域の人々の生活に欠かせない専門職は、常に需要があります。
医療・福祉系(看護師、薬剤師、理学療法士、介護福祉士など)
高齢化が進む地域にとって、医療や介護の専門家はまさに宝です。資格と経験は、どこへ行ってもあなたのキャリアを支える強力な武器になります。派遣・アルバイトなどでも働けるので、生活拠点を定期的に変えたり、旅をしながら働いている人も。介護関係は学び直しや実務経験による資格取得など、キャリアチェンジを考えている人にも間口が開かれています。
バックオフィス系(経理、労務、総務など)
どんな企業や団体にも不可欠な管理部門のスキル。特に人手不足の地域企業にとっては、バックオフィス業務を効率化してくれる人材は非常に貴重です。最近では、複数の企業のバックオフィス業務を請け負うBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という形で働く選択肢もあります。都市部や海外企業のオンライン秘書として働く方も増えています。
インフラ・生活関連(バス・タクシードライバー、電気工事士、保育士、美容師など)
地域の足を支える運転手、生活インフラを整備する技術者、子育て世帯を支える保育士、美容師や理容師・ヘアメイク。地域コミュニティに不可欠な存在であり、地域の人と人との濃いつながりを実感できる仕事でもあります。資格を持っていればすぐに働けますし、取得に向けて学び直しも可能。年齢に制限なく働くことができるのも利点です。
不動産・住まい関連(宅地建物取引士、建築士など)
空き家問題が深刻化する地方において、不動産の専門知識は非常に価値があります。移住希望者への物件紹介、空き家バンクの運営サポート、古民家再生のコンサルティングなど、地域課題の解決に直結する活躍が期待できます。建築士は特に引っ張りだこ。資格がなくとも、リノベーションの経験が活きることも。
観光・語学系(観光ガイド、宿泊施設スタッフなど)
インバウンド観光に力を入れる地域では、語学力とコミュニケーション能力が非常に重宝されます。飲食や店舗管理、SNSの経験も複合的に活かせる職種です。地域の魅力を多言語で伝えることで新たな価値を創出できますし、地域との濃いつながりを形成することもできます。
事業承継
後継者不足に悩む地域企業は少なくありません。これまで経験してきた業界知識、マーケティングや経営、事業開発のスキルを活かして事業を引き継ぐという道があります。新たな風を吹き込むことも、地域に大きく貢献できる働き方の一つです。
”求人を探す”から”なりわいを創る”へ。田舎で働くためのキャリア論
理想の働き方を実現するためには、キャリアに対する考え方を少し転換してみる必要があります。それは、「理想の求人を探す」という受け身の姿勢から、「自分ならここで何ができるか?」を考え、自ら仕事を創り出していく”キャリアオーナーシップ”を持つことです。
田舎では、マルチタスクや業務効率化といったスキルも立派なポータブルスキルとして評価されます。そして、それ以上に大切なのがコミュニケーションスキルです。
地域の人々と積極的に関わり、信頼関係を築く中で、「実はこんなことで困っているんだ」「あなたなら、こんなことを任せられるかも」といった、求人票には載っていない”生きた仕事”の情報が入ってくるようになります。
大切なのは、「どんな会社で働くか」の前に「この地域で、自分はどう生きたいか?」を考えることかもしれません。

あなたのスキルを掛け合わせ、自分だけの働き方をデザインしよう
田舎での働き方は、一つの正解があるわけではありません。一つの職業に固執するのではなく、複数の仕事を組み合わせる「複業」によって、経済的な豊かさと精神的な充実を両立させるという視点も重要です。あなたのスキルと地域のニーズを掛け合わせることで、無限の可能性が広がります。例えば、実際に以下のような働き方をしている方がいらっしゃいます。
- 薬剤師の資格 × ライティングスキル → 薬局で働きながら、地域の健康情報ウェブメディアで記事を執筆する。オンライン服薬指導の仕組みを導入する。
- 介護の経験 × コミュニティ運営スキル×趣味で雑貨づくり → 介護施設で働きながら、高齢者と若者が交流できるコミュニティースペースを運営したり、地域のマルシェに趣味でつくっている雑貨を出店したりする。
- 経理の経験×ITスキル×飲食店でのアルバイト経験 → 都市部の企業でオンライン経理として週3日で働きながら、地域の複数の飲食店でオンライン決済の導入をお手伝いする。
都市の”仕組み化された仕事”に自分を合わせるのではなく、田舎の”人不足”というチャンスを活かして、自分らしい「なりわい」を創り出していく。そんな働き方が、これからの時代の豊かさに繋がるのではないでしょうか。
まずはあなたの持つスキルを棚卸しし、「この地域なら何ができるだろう?」と考えてみることから始めてみませんか。
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Edit by 高崎澄香