岩手県花巻市、豊沢川の渓谷沿いに佇む「大沢温泉」。約1200年もの歴史を刻み、宮沢賢治や高村光太郎といった文人墨客にも愛されてきたこの温泉地は、今もなお多くの人々を惹きつけてやみません。今回、東北に暮らす親戚からのお誘いを受け、東北では広く知られている大沢温泉 湯治屋に宿泊してきました。湯治屋をはじめ、大沢温泉の魅力の数々をご紹介します。趣の異なる宿、多彩な湯船、そして豊かな自然が織りなす、心癒されるひとときを求める旅へご案内します。

大沢温泉とは? 基本情報
- 所在地: 岩手県花巻市湯口字大沢181
- 泉質: アルカリ単純泉(源泉温度 51.3℃)
- 肌に優しく、なめらかな湯触りが特徴です。さまざまな成分がバランス良く含まれています。湯船ごとに泉質と温度が若干ずつ異なるため、体調や気分に合わせて湯船を選べるのも、とても嬉しいです。
- 効能: 神経痛、筋肉痛、関節痛、慢性消化器病、痔疾、冷え性、うちみ、くじき、疲労回復、健康増進など。
- アクセス:
- 電車:JR東北本線花巻駅から岩手県交通バス新鉛温泉行きで約26分、「大沢温泉」下車すぐ。
- 車:東北自動車道 花巻ICから県道12号線経由で約15分。
- 特徴: 豊沢川沿いに位置し、四季折々の渓谷美が楽しめます。歴史ある湯治場の風情と、近代的な旅館の快適さを併せ持っています。大沢温泉までの道中に広がるのは、既に宮沢賢治の物語に出てくるような風景。まるで自分も童話の登場人物なのでは?と錯覚するような時間を過ごすことができます。
文人墨客も愛した、歴史と文化の薫り

大沢温泉の歴史は古く、約1200年前に遡ると言われています。江戸時代から続く趣深い建物や茅葺き屋根の長屋は、今もなお東北の湯治文化を伝えています。
特筆すべきは、日本を代表する詩人・童話作家の宮沢賢治や、彫刻家であり詩人でもある高村光太郎もこの地を愛し、度々訪れたということです。館内には、幼い頃の宮沢賢治や若き日の高村光太郎の写真などが飾られており、彼らが過ごした時間に思いを馳せることができます。また、書家の相田みつをも訪れたとされ、その歴史の深さを物語っています。南部藩主とも縁があったと伝えられ、多くの人々に愛されてきた温泉地であることがうかがえます。
また、音叉和温泉から花巻市市街地に車で約20分走らせると、宮沢賢治が幼少期によく家族でいった「やぶ屋」というお蕎麦屋さんもあります。賢治少年はラムネとそばの組み合わせをよく注文したとか…。
選べる3つの趣、あなたに合った宿選び
大沢温泉には、滞在スタイルに合わせて選べる3つの宿泊施設があります(うち1つは現在ギャラリーとして利用)。
- 山水閣(さんすいかく)
- 豊沢川の渓流に面して建つ、和を基調とした近代的な旅館です。落ち着いた雰囲気の中で、ゆったりとした時間を過ごしたい方におすすめ。
- 客室は、一人旅からグループ、家族旅行まで対応できる多様なタイプが用意されており、多くのお部屋から四季折々の美しい景色を眺めることができます。
- 食事は、地元の食材を活かした会席料理やバイキングなどが楽しめます。

- 湯治屋(とうじや)
- 昔ながらの湯治場の風情を色濃く残す、自炊も可能な宿泊棟です。一部は築200年を超える木造建築で、歴史の重みを感じさせます。
- 客室は簡素ながらも清潔で、テレビ、冷蔵庫(空)、ポット、お茶道具などが備えられています。布団や調理器具の持ち込みも可能で、共同の炊事場(コイン式ガスコンロ、電子レンジあり)を利用して自炊も楽しめます。
- リーズナブルに長期滞在したい方や、湯治文化を体験したい方に人気です。
- 部屋によっては客室の窓のすぐ横に豊沢川が流れていて、川のせせらぎを聴きながら目覚める朝は「こんな朝を毎日迎えたい」と帰りたくなくなるような絶景が広がっています。

- 菊水舘(きくすいかん)
- 豊沢川の対岸に建つ、美しい茅葺き屋根が特徴的な建物です。かつては旅館として営業していましたが、現在はギャラリー「茅(ちがや)」として、宿泊客や日帰り客が見学できるようになっています(冬期間は閉館の場合あり)。
- 大沢温泉の象徴的な景観の一つであり、特に露天風呂「大沢の湯」からの眺めは格別です。ただし、菊水館から大沢の湯を眺めると…混浴露天風呂が目に飛び込んでくるので、あまり直視できないのはここだけの話です…。
- 2025年5月現在、スタジオジブリとコラボしており『トトロとジブリとカンヤダと』という、この場所によく似合うギャラリ/ミュージアムとして利活用されています。

湯めぐりの楽しみ、個性豊かなお風呂たち
大沢温泉の最大の魅力は、なんといってもその多彩な湯船です。宿泊者はもちろん、日帰り入浴でも複数のお風呂を楽しむことができます。
混浴露天風呂「大沢の湯」

- 大沢温泉の代名詞ともいえる名物露天風呂。豊沢川に面した開放感あふれる造りで、川のせせらぎを聞きながら、四季折々の自然美を満喫できます。
- 夜間(20:00~21:00)には女性専用時間が設けられています(夏季のアブ発生時期などは中止になる場合があります)。
- 開放的すぎるが故に、日中の入浴は女性には少し勇気がいるかもしれませんが、その価値のある素晴らしいお風呂です。
- 筆者は混浴露天風呂に3回入りましたが、3/3で女性も湯に浸かっていました。最初は驚きますが、不思議なもので2回目ともなると慣れてくるのです。昔は、このような光景やお風呂場も普通にあったのかな~なんて想いを馳せるのも、この露天風呂の醍醐味かもしれません。
女性専用露天風呂「かわべの湯」

- 「大沢の湯」はちょっと…という女性のために用意された、豊沢川沿いの露天風呂。こちらも野趣あふれる雰囲気で、気兼ねなく湯浴みを楽しめます(冬期は入浴できないことがあります)。
薬師の湯(内湯)

- 湯治屋にある、レトロなタイル張りの内湯。源泉かけ流しで、体の芯からじっくりと温まると評判です。男女別に分かれており、24時間入浴可能です(清掃時間を除く)
山水閣「山水の湯」(内湯・露天風呂)
- 山水閣の宿泊者専用(一部日帰りプランでも利用可)。広々とした内湯と、自然を感じられる露天風呂があります。
山水閣「豊沢の湯」(半露天風呂)

- 山水閣にあり、日帰り入浴でも利用可能な半露天風呂。こちらも豊沢川に面しており、心地よい風を感じながら入浴できます。24時間利用可能です。
南部の湯(内湯)

- 男女別の内湯です。
日帰り入浴は、湯治屋の受付で大人700円、子供400円(2025年5月現在)。受付時間は7:00~20:30(21:00終了)です。利用できるのは、「大沢の湯」「かわべの湯」「薬師の湯」、そして山水閣の「豊沢の湯」です。
湯治場の風情と美食を堪能「お食事処 やはぎ」

大沢温泉の湯治屋の中には、自炊をしない方にも嬉しい「お食事処 やはぎ」があります。築200年の趣ある建物内で、地元食材を活かした美味しい料理を味わうことができます。宿泊者はもちろん、食事だけの利用も可能です。時間帯がよかったのか、筆者が滞在した日は、どのメニューを注文しても5分以内ですべての料理が提供されました。天ぷら、から揚げ、丼もの…などなど。旅館の味を越え、居酒屋のつまみのようなメニューの豊富さも超え、ここの料理を食べるだけでも満喫できてしまうほどです。
- 営業時間:
- 朝:7:30~9:00 (予約制)
- 昼:11:15~14:00 (ラストオーダー 13:45)
- 夜:17:15~21:30 (ラストオーダー 21:00)
- 定休日:無休
- おすすめメニュー:
- 大沢・純そば(十割そば): 地元大沢産のそば粉を100%使用した、香り高い逸品。
- ひっつみ定食: 岩手の郷土料理「ひっつみ」を味わえる定食。もちもちとした食感が楽しめます。
- 鶏のきじやき重: 甘辛いタレが絡んだジューシーな鶏肉がご飯との相性抜群で、絶賛の声も多い人気メニュー。
- 若鶏唐揚げ、天ぷら盛り合わせ、生姜焼き定食なども人気があり、定食、麺類、一品料理からおつまみまで豊富なメニューが揃っています。
- 焼き鳥: こんなに柔らかく、味の引き締まった焼き鳥が存在するのか…と食べ終えても垂涎が続く絶品焼き鳥は筆者一押しです。

いかがでしたでしょうか。大沢温泉の魅力とハラハラドキドキする大正ロマンと混浴露天風呂に飛び込みたくなってきたのではないでしょうか。歴史と自然、そして心温まるお湯に出会える大沢温泉。宮沢賢治ゆかりの地を訪れる際は、ぜひ大沢温泉にも足を運んでみてください。
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Edit by 長嶺将也