梅の香りが漂い始めると、日本の多くの家庭で始まる「梅仕事」。それは、初夏の短い期間にだけ楽しめる、季節の恵みを活かした手仕事です。梅酒を漬けたり、梅干しを作ったり、爽やかな梅シロップを仕込んだり。手間ひまかけて作る保存食は、味わい深さもひとしおです。
この記事では、そんな梅仕事の魅力と、代表的な3つの梅加工品の作り方、そしてそれぞれに適した梅の選び方についてご紹介します。
梅の魅力と、それを育む名産地
梅は、その愛らしい花だけでなく、実にも多くの魅力が詰まっています。クエン酸をはじめとする有機酸が豊富で、古くから疲労回復や食欲増進などに良いとされてきました。そんな梅を、日本の各地で大切に育てている名産地があります。

和歌山県(紀州):生産量日本一を誇る梅の一大産地。「南高梅(なんこううめ)」は全国的に有名で、果肉が厚く柔らかいため、梅干しにも梅酒にも適しています。温暖な気候と長い日照時間が、上質な梅を育みます。
群馬県: 東日本有数の梅の産地で、「白加賀(しらかが)」や「梅郷(ばいごう)」などが代表的な品種。特に白加賀は、果肉が緻密で梅酒や梅シロップにすると、すっきりとした上品な味わいが楽しめます。
福井県:日本海側の気候風土で育つ福井の梅も質が高いことで知られます。特に若狭地方で栽培される「紅映梅(べにさしうめ)」は、熟すと美しい紅色になり、種が小さく果肉が厚いのが特徴。梅干しにすると鮮やかな色合いと濃厚な味わいが楽しめます。
それぞれが伝統を守りながらも新しい梅の楽しみ方を提案し、地域の魅力を発信しています。私たちが梅を選ぶことは、こうした産地の営みを支えることにも繋がっています。

梅仕事はじめの一歩!目的別・梅の選び方
梅仕事の仕上がりを左右する大切なポイントが「梅選び」。作るものによって適した梅の種類や状態が異なります。
●梅酒用の梅
種類: エキスが出やすく、爽やかな香りと酸味が特徴の「青梅」が一般的です。カリンとした硬さのあるものを選びましょう。
品種: 南高梅、白加賀、鶯宿(おうしゅく)などが適しています。
選び方: 表面にハリとツヤがあり、できるだけ傷や斑点がないもの。粒が揃っていると、均一にエキスが出やすくなると言われています。香りが良いものを選びましょう。
●梅干し用の梅
種類: 果肉が柔らかく、漬け上がりがふっくらとする「完熟梅」が最適です。黄色く色づき、甘い香りが漂うものが良いでしょう。青梅を使う場合は、常温で追熟させてから使います。
品種: 南高梅(特に和歌山県産)、紅映梅など、皮が薄く果肉が厚く、種が小さい品種が向いています。選び方: 傷がなく、ふっくらとしていて、指で軽く押すと少し弾力を感じる程度のものが理想。傷んでいるものは避けましょう。
筆者は大きい梅が黄色くなるまでの間収穫を待つのが、毎年どきどき。
●梅シロップ用の梅
種類: フレッシュな酸味と香りを楽しむなら「青梅」がおすすめです。雑菌の繁殖を防ぐためにも、傷のない新鮮なものを選びましょう。
品種: 特に品種は問いませんが、香りの良いものが良いでしょう。南高梅や白加賀などが手に入りやすいです。
ポイント:多少の斑点や傷があるものはシロップにしても大丈夫。一度冷凍すると、梅の細胞壁が壊れてエキスが出やすくなるため、シロップ作りには冷凍梅も適しています。
新鮮で質の良い梅を選ぶことが、美味しい梅仕事の基本と言われています。その他、ちょっと傷みがあり熟して黄色くなった梅は、コンポートやジャムにするのもお勧め。ありがたく、あますことなく使いましょう!

季節を味わう!簡単にできる3つの梅レシピ
梅を手に入れたら、いよいよ梅仕事の始まりです。ここでは簡単で手軽に美味しい3つのレシピをご紹介します。
1. 自家製ブランデー梅酒
材料: 青梅 1kg、氷砂糖 500g~800g(お好みで)、ブランデー(35度)1.8L
作り方:
梅を優しく洗い、2〜4時間水に浸けてアクを抜く(省略可)。
水気を完全に拭き取り、竹串でヘタを取る。
熱湯消毒した保存瓶に、梅と氷砂糖を交互に入れる。
ブランデーを静かに注ぎ、しっかり蓋をして冷暗所で保存。
時々瓶を揺すり、3ヶ月頃から飲み頃。1年以上熟成させると、よりまろやかに。
ホワイトリカーでつけるよりもブランデー梅酒にしてしまうのがお勧め。
ブランデーはお買い得なものでも全然美味しいですよ。
2.らっきょう酢の梅干し
材料: 完熟梅 500g、らっきょう酢 500ml、赤しそ50g、塩8g
作り方:
梅は竹串を使って黒いヘタを取り除き、水で洗って水けを切る。
綺麗な布巾で1個ずつ水けを拭き取る。
赤しそはしっかり洗って水けをきる。ボウルに入れ、塩を加えて揉み込む。アクが出てきたら絞り、汁は捨てる。
清潔な保存瓶に3.と4.を交互に入れ、「らっきょう酢」を注ぎ入れて蓋をする。
冷暗所に置き、2~3ヶ月ほど漬込めばできあがり(梅全体に酢がまわるように、2~3日は瓶を傾けてくるくると回してください)
梅干しって手間がかかるので買えばいいや…となりがちなのですが、らっきょう酢は超簡単。風味を失わずに、半年は保ちます。
3. 爽やか梅シロップ
材料: 青梅 1kg、氷砂糖(またはグラニュー糖、上白糖)1kg~1.2kg(梅と同量~1.2倍)
作り方:青梅を洗い、水気を完全に拭き取り、ヘタを取る。
梅に竹串やフォークで数カ所穴を開けるか、一晩冷凍する(エキスが出やすくなる)。
熱湯消毒した保存瓶に、梅と氷砂糖を交互に入れる。
蓋をして冷暗所に置き、毎日1~2回、瓶を優しく揺すって砂糖を溶かす。
10日~2週間ほどで梅がシワシワになり、シロップが上がってきたら完成。
梅を取り出し、シロップを鍋で一度加熱(沸騰直前まで)すると保存性が高まる。冷蔵庫で保存。
梅シロップは炭酸で割ると病みつきになります。カビと発酵には要注意です!

手仕事の喜びを、日々の暮らしに
梅の花が散って、青々とした葉がつき、あっという間に実になる。日々大きくなる実にうきうきしてしまうのがこの時期の醍醐味。今年も自宅の梅を収穫していますが、スーパーで買う梅は本当に綺麗なものだけを厳選したものなのだと、農家さんの苦労は推し量れません。
農家でなくても、田舎では梅の木の数本が自宅に自生していることはめずらしくありません。ただ、剪定から収穫までが面倒なこともあって、庭の梅の木を放置してしまう人が多いのも現実。地域との繋がりで梅仕事をお手伝いしてお裾分け、という好循環が生まれることを祈っています。
梅を仕込む工程一つひとつに季節の移ろいを感じ、完成した時の喜びは格別です。自分で作った梅酒や梅干し、梅シロップは、まさに我が家の味。添加物の心配もなく、安心して味わえるのも魅力です。
今年の初夏は、梅仕事に挑戦して、日本の豊かな食文化と手作りの温かさを感じてみませんか。暮らしに季節の彩りをもたらしてくれるはずです。
トップ画像引用:梅干し通販店【五代庵】公式HP
Community Branding Japanについて
CBJでは、全国の地域経済創発活動に力を入れて進めています。PRやブランディングのご支援にはじまり、実際にはたらくことを見据えた地域体験や研修プログラムづくりだけでなく、プロジェクトメンバー自身がLinkedInをはじめとするオウンドメディアでの発信することによって集客も担っていきます。活動にご興味を持ってくださる個人、企業、地方自治体の皆様、お気軽にお問い合わせください!
Edit by 高崎澄香